トカトントン

例えば「あれだけ楽しみにしていた旅行に行きたくなくなった。」「憧れのアーチストのチケットがやっと取れた。しかしライブに行きたくない。」「恋人の粗が目立つ。急に興ざめする。」など、反作用的な情動が瞬時に沸き上がることがある。
太宰治の書簡文では「トカトントン」と音が鳴る。音が響くとあたかも別人格が現れたようにアディクションを失う。音こそしないが日常的によくあることである。人は「説明されて美しいと感じる美しさ」に刹那に激しく高揚する。しかし突然と凪がやってきて潮が引く。情報があまねく現代では「美しさ」は理屈によって埋め込まれる。そこから幸福が生まれることはない。説明されて得た美意識を振る舞い地獄に落ちる。ただ自分に素直であればいいのだが、それができない。
太宰にしては珍しく最後は辛辣に締めくくった。
人は背伸びをするものだ。
ペシミストはよく背伸びをする。

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