車輪の下

作者のヘルマンヘッセは美しく繊細な顔立ちをしている。限りなく繊細な心の持ち主は、この作品に韻文テイストの格調を持ち込んだ。過去に「詩人以外何者にもならない」と言って家を飛び出した。そう、この作品の主人公ハンスは彼なのである。ヘッセが病んで傷んでいくシーケンスをハンスが演じているのだ。
受験に臨むハンスの気持ちは序章から揺れ動く。勉強に疲弊し陰鬱となり時化のように苦しみ、そして合格により差し込む晴れ間は万事の不安から解放され心地よく、しかし学校生活では軋轢により暗黒へと退廃する。少年の気持ちが見事なグラデーションで描かれている。
ハンスは酒におぼれて自己を見失う。これはキャピタリズムにおいてリアリティのない営みは浄化されることのメタファである。浄化作用なしにキャピタリズムは成長しない。そのことを受け入れられず次第に病んでいくものだ。

ヘッセに幸福が訪れたのは彼が50歳を過ぎたころからである。

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